42歳でパートに入った会社の、ひとまわり位年下の同僚に罵声を浴びせられたのが、人生最大の屈辱だったと言う「シアワセナ人」は、その同僚が居ない今となっては、それ以前と変わらずシアワセに生きている。
若い頃から容姿端麗で、素直で明るくて物を知らなくて天然系の異性に好かれるタイプである。親兄弟にも可愛がられ、今まで出会った人はイイ人ばかりで、みんな良くしてくれたのだと言う。50歳になった今でも可愛い面影が残っていて、同年代以上の異性に人気がある。

その「シアワセナ人」が、会社で疑問を投げかける。
どうしても外せない用事の為に、半日の有給休暇を取った人が居る。毎年使い切れない有給休暇があって捨てているのだから、忙しい訳でもない日に、半日でなく、無理せずに1日休めば良いのに。というのが「シアワセナ人」意見。
こういう休み方の人は結構いる。
職場の中は、少々弱肉強食なので、自分の仕事を人に取られない為の防衛策になっていたりするのだ。
自分に自信がない人にはよくある事である。仕事を頑張り、努力している事で認めてもらおうとする。
この考え方が「シアワセナ人」には、理解できない。
自分の存在価値はあって当然で、人に存在を認められないなんてあり得ないし、考えられないらしい。
仕方ないので、別の例えで説明する事にした。
「容姿に優れた人には何もしなくても色んな人が目をかけてくれるけど、容姿が優れていない人が、周りの人や好きな人に振り向いてほしいと思ったら、何か努力をするでしょ?仕事でも同じような事。」
こう解説をすると、間髪入れずに
『何を努力するの?』
と、聞き返された。
「シアワセナ人」は、シアワセなので、努力の必要がなかったらしい。
一応、努力の内容として、自分を磨いたり、話題を豊富にしたり、髪型を変えたり…なんて幾つか挙げてみた。
『なるほどね』
と言われた時の虚脱感は凄まじかった。

あぁ、解らないんだ。
思わず(解っていた事だが)、「シアワセに生きて来たんだね」と云ってしまった。
『そうね』
と返されたら、笑うしかない。

自分が「シアワセナ人」でなくて、ヨカッタ。